花の詩vol.32『カワラナデシコ』(ナデシコ科)

 カワラナデシコは、秋の七草の一つです。

 

 日当たりのよい草原、河原、崖近くの斜面などの、水はけのよい場所に自生しています。

 

 野生種の花色は薄紅紫色で、地域によって濃淡があります。

 

 花弁は細かく深く切れ込んでいます。花期は7月から旧盆の頃までです。

 また、”なでしこ”は和歌にもよく詠まれてきた花でもあります。万葉集にはなでしこの歌が26首。そのうち12首が大伴家持が詠んだものです。家持はよほどなでしこが好きだったようですね。

 

 それでは、そのうちの2首をご紹介しましょう。

 

 まずは、家持が後の正妻となる人に贈った歌です。

 

 

 ~ なでしこが その花にもが 朝な朝な 手に取り持ちて 恋ひぬ日なけむ ~

 

 

(あなたはなでしこの花であってほしい。そうすれば私は朝が来るたび手に取って、毎日愛でいとしまない日とてないだろう)

 

 対して、その家持に恋した笠女郎(かさのいらつめ)が家持に贈った歌です。

 

 

 ~ 朝ごとに 我が見るやどの なでしこが 花にも君は ありこせぬかも ~

 

 

(毎朝私が見る庭のなでしこの花が、あなたならよいのに)

 

 万葉集には女郎の歌が29首のっていますが、そのすべてが、女郎の慕う家持への歌です。数年にわたり恋の歌を贈り続けますが、その恋が成就することはなかったといいます。