花の詩vol.38『スミレ』(スミレ科)

~春の野にすみれ摘みにと来し我そ 野をなつかしみ一夜寝にける~ (万葉集・山部赤人)

 

 春の野原へすみれを摘みに来た私だが、その場への親しみを感じてしまい、つい一夜を明かしてしまったなぁ

 

 

「一夜を明かした」とありますが、実際に野原で一晩寝たわけではありません。山部赤人が、儚げに咲くスミレの姿を見て「それほどこの野原に親しみを感じた」という誇張表現のようです。

 スミレはスミレ科スミレ属の多年草です。日本、中国などを原産地とし、3~5月に花をつけます。スミレ科の仲間を総称してスミレと呼ばれがちですが、本来のスミレとはスミレ科スミレ属『viola mandshurica』(区別するために、”マンジュリカ”と呼ばれることも)ただ1種を指します。

 

 スミレの仲間は可憐な姿をしていますが、その姿とは裏腹に、非常に生命力の強い植物です。よく道端のコンクリートの割れ目に生えていたりもします。花の美しさに惹かれてうっかり庭に植えたりすると、翌年大量に増えてしまうため、注意が必要です。

 

 日本には50種類ほどが自生していますが、最もポピュラーな種としては、タチツボスミレがあります。青紫色の花をつけ、成長すると茎が立ち上がるのが特徴です。

 

 また、三色スミレと呼ばれるパンジーや、ビオラもスミレ科スミレ属の仲間です。これらは10月~11月頃に植えれば、翌年の春まで花を咲かせ、楽しませてくれます。