花の詩vol.43『ハギ』(マメ科)

 ハギはマメ科の落葉低木で、秋の七草のひとつです。分布は種類にもよりますが、日本のほぼ全域に自生します。

 

 背の低い落葉低木ではありますが、木本とは言い難い面もあります。

 

 茎は木質化して固くなりますが、年々太くなって伸びるようなことはなく、根元から新しい芽が毎年出ます。直立せず、先端はやや枝垂れます。

 秋に枝の先端から多数の花芽を出し、赤紫の花の房をつけます。果実は種子を一つだけ含み、楕円形で扁平です。

 

 ハギはマメ科植物特有の根粒菌との共生のおかげで、痩せた土地でもよく育つ特性があります。この特性を買われ、古くから道路斜面、治山、砂防などの現場で緑化資材として用いられています。種子の吹付け工法に用いられるのは、ヤマハギ、メドハギの種子です。

 

 

 また、意外な気もしますが、ハギは万葉集で最もよく詠まれた花でもあります。今回は山上憶良の歌を紹介します。

 

~秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数ふれば 七種(ななくさ)の花~

 秋の野原に咲いている花を指折り数えると、七つの花が浮かびます。

 

~萩の花 尾花葛花 なでしこが花 をみなへし また藤袴 朝顔が花~

 こちらは、上の歌を序歌とし、秋の七草を詠んだものです。秋の七草は、一般的にハギ、ススキ、クズ、カワラナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウを言います(朝顔はキキョウのほかにヒルガオやムクゲとする説があります)。

 

 無病息災を祈願する春の七草とは違い、秋の七草は秋の野に咲く花の美しさを愛でるものなのです。