花の詩vol.68『ヒガンバナ』(ヒガンバナ科)

 ヒガンバナはヒガンバナ科の多年草です。名前のとおり、秋の彼岸(9月中~下旬)頃に花を咲かせます。

 

 別名は曼殊沙華(まんじゅしゃげ)、学名はリコリス・ラジアータといいます。『リコリス』とはヒガンバナ科ヒガンバナ属(リコリス属)の総称です。リコリス=ヒガンバナと勘違いしそうですが、ヒガンバナはリコリスの品種のうちのひとつなのです。

 真っ赤な花を咲かせ、一番馴染みの深い「ヒガンバナ」、白い花の「シロバナマンジュシャゲ」、一足早く花を咲かせる「ナツズイセン」、同じく夏の頃にオレンジ色の花を咲かせる「キツネノカミソリ」などの仲間があります。

 

 ヒガンバナは50cmほどに伸びた花茎の先に、花弁の大きく反り返った花をつけます。

 

  花の咲く段階では葉は出ておらず、花が終わり秋の深まった頃に葉を出し始めます(写真はヒガンバナの葉)。葉は翌年の5月頃に枯れ、また花を咲かせるまでヒガンバナの地上部は姿を消します。

 ヒガンバナは毒性を持つ植物としても知られています。

 

 今ではあまり馴染みが無いかもしれませんが、かつては田んぼのあぜ道に咲くヒガンバナをよく目にしました。あぜ道にヒガンバナが多い理由はその毒性によるもので、ネズミ、モグラ除けとして植えられていました。

 

 ヒガンバナの毒は特に球根に多く含まれるため、ミミズや昆虫など地中に住む生物はヒガンバナの周囲には寄り付きません。そして、これらの生物を餌とするネズミやモグラも周囲からはいなくなるという事なのです。

 

 人間にとっても有毒であるという事や、あぜ道の他には墓地などに植わっているイメージがあり、以前はあまり好かれない事もあったヒガンバナですが、近年では園芸植物として人気が高まっています。

 

 ただし、ペットや小さいお子様のいるご家庭では、植える場所に注意が必要ですね。